【自翻Web】神眼英雄之幻想譚~失踪的青梅竹馬成為天使的事件~


本帖最后由 動漫Kirito 于 2019-9-25 16:31 编辑


神眼英雄之幻想譚~失踪的青梅竹馬成為天使的事件~

作者 北山結莉
翻譯:動漫Kirito

除了我以外,还有谁能作为我而活着呢?

有著 等级、技能、地位等概念存在,以剑与魔法世界作為背景的故事。


达可易斯王国的第一王子,西昂有著名为莫妮卡的未婚妻。可是,莫妮卡在11岁的时候失踪。西昂在13岁時, 雷亚斯基尔『魔眼』觉醒后,被神秘的研究组织绑架了。

在研究所被迫过着非人的生活,舍弃了王族榮譽感的西昂,在16岁时发生了变化,出现了一位“少女”。少女和過去失踪的未婚妻莫妮卡长得一模一样……。

西昂的雷亚斯基尔『魔眼』变身为世界管理者权限的『神眼』。

这是一个偽英雄和偽天使反抗世界的英雄谭。



本帖最后由 動漫Kirito 于 2019-9-24 23:00 编辑


第1話 序章

――俺以外の誰かが、どうして俺として生きているのだろうか?


――除了我以外,还有谁能作为我活着呢?


 わからないことだらけだ。この世界は、わからないことだらけだ。他人のことはもちろん、自分のことですらも……。

净是不懂的事。这个世界,净是不明白的事。别人的事不用说,就连自己的事也……




 わからない。

不知道。


 ――いったい君はどこへ行ってしまったのだろうか?

——妳到底去哪里了?




 わからない。

不知道。

 ――今俺の前にいる、君の姿をした、君以外の誰かは、いったい何者なのだろうか?

——现在出現在我面前的,妳的身影,除了妳以外,还能是谁,到底是什么人呢?

 わからない。隣に立つ誰かに尋ねてもわからない。けど、答えを知りたくて、シオン・ターコイズは……いや、シオンはずっと考える。

不知道。问旁边站着的是谁,也不知道。
但是,想知道答案,西昂·达可易斯……不,西昂一直在思考。

 でも、答えなんてわからなくて……。

但是,不知道答案是什麼……。

 それでも唯一、わかったことがある。

尽管如此,唯一明白的事。

 それは、この世界は何かがおかしいということ。

那就是,这个世界有著什么奇怪的地方。


 何かが異常だ。この世界は何かがおかしい。

有什么异常。这个世界有些奇怪。

 けど、誰も違和感を覚えていない。自分以外の誰も、今はまだ……。

但是,谁都沒感覺到違和感。除了自己以外的任何人,现在还……。

 だから、気づかないのだ。

所以,没有注意到。

 シオン以外の誰もが、気づいてくれないのだ。

除了西昂以外,谁都没有注意到。


 だけど……。

但是……。

 それでも前に進むのだ。

即使如此也要前进。

 かつての君ならきっとそうする。そう思ったから。

如果是以前的妳一定会那么做的。我是这么認為的。

 だから、これは、本物が偽物となり、偽物が本物となり……。

因此,这个,真货成为假货,假货成为真货……。

 それでも大切な何かを探して守る。

尽管如此还是为了寻找重要的东西而守护着。

 そんな物語だ。

就是这样的故事。









“我”,已移除。北山精幻短篇還有沒寫出來的呢
說水山放棄可能還太早




北山web新作


本帖最后由 動漫Kirito 于 2019-9-27 16:45 编辑


翻譯:動漫Kirito
校對:尚無
第2話 モニカ・ヴァーミリオンという少女

第2話 名叫莫妮卡·瓦米利翁的少女

 人間族、獣人族、ドワーフ族にエルフ族、そして魔族などの様々な種族が暮らす母なる世界で……。

人类族、兽人族、矮人
族、精灵族、以及魔族等眾多種族生活在這個有如母亲的世界……。

 子供の頃、シオン・ターコイズは夢を見ていた。夢だからハッキリと覚えているわけではない。

小时候,西昂·达可易斯做了個梦。不是因为是梦就清楚的记得。

 目が覚めてしまえば内容は覚えてなく、朧気な記憶すら残っていない。いつも大したことは何も思い出せないで夢は終わる。

醒来后内容就不记得了,连模糊的记忆都没留下。

 けど、ここではない違う世界で、生きている夢だったと思う。だから、もしかしたら自分の中に知らない誰かがいるんじゃないか。シオンはずっとそう思っていた。

但是,不是在这里而是在不同的世界,我想那是一個活生生的梦。

 十歳の時、モニカ・ヴァーミリオンと出会うまでは……。

十岁的时候,在遇到莫妮卡·瓦米利翁之前……。


   ◇ ◇ ◇



 シオンの日常には笑顔が極端に少なかった。皆無といってもいい。

西昂日常的笑容极少。可以说是完全没有。


 魔道大国の第一王子として産まれ、未来の国王という立場を有しているからこそ、気軽に話をできる友人が身近にはいない。

作为魔道大国的第一王子出生,正因为有着未来的国王的立场,身边没有能轻松交谈的朋友。


 父である国王は魔道の研究と執務に忙しく、息子に興味がない。滅多に顔を合わせることもなかった。実の母は自分を産んだ時に死んだから顔もわからない。

作为父亲的国王忙于魔道的研究和办公,对儿子没有兴趣。很少见面。亲生母亲在生下自己的时候死了,所以连面貌都不知道。



 父親は後妻と結婚したが、こちらも忙しいらしくて数えるくらいしか話をしたことがない。顔見知り未満の他人だった。

父亲和后妻结婚了,但似乎太忙了,只说了几句话。是個不認識的陌生人。

 物心ついた頃には血が半分繋がったイリナという名の妹が生まれたが、父親か義母の意向なのか、城内で会っても他人行儀に挨拶をするくらいには距離を置かれていた。

在懂事的时候生下了半截血缘关系的妹妹 伊莉娜,是父亲还是继母的意向,在城内即使见到了也只是跟人打招呼,保持着距离。

 だから……。

所以……。

 シオンはお城の中で、いつもひとりぼっちだった。シオンの周りに気を許せる相手なんて、一人もいなかった。明るい未来なんて、何も見えなかった。

西昂在城堡里,总是一个人。在西昂的周围,身边没有一个能够信赖的人。丝毫看不见明媚的未来。

 けど――、

但是——

「初めまして、シオン様。ヴァーミリオン王国第一王女、モニカと申します」

「初次见面,西昂大人。我是瓦米利翁王国第一公主莫尼卡」


 十歳の時、隣国の第一王女であるモニカ・ヴァーミリオンと婚約して、シオンの人生は一度、大きく変わった。


十岁时,与邻国的第一公主莫尼卡·瓦米利翁订了婚,西昂的人生发生了一次很大的变化。

   ◇ ◇ ◇



 初対面の折、シオンとモニカは二人きりになって、婚約者同士で話をする。当時、友達すらいなかったシオンは対等な相手とどうやって喋ったらいいのかよくわからなかった。

初次见面的时候,西昂和莫妮卡就只有两个人,婚約者間的谈话。当时连朋友都没有的西昂,不知道该怎么跟对等的人说话。


 だから、モニカが気を遣ってあれこれ喋りかけてくれても、ほとんど表情を変えずに、聞かれたことだけにぽつりぽつりと答えていた。すると――、

所以,即使莫妮卡很在意,说了許多话,也几乎不改变表情,只是單單地回答着被问到的事情。于是――



「……ねえ、もう少し笑った方がいいと思うよ?」

「……喂,觉得再笑一点比较好哦?」

 燃えるように赤い髪をしたモニカが、不意にそんなことを言った。何を訊いてもシオンが無愛想な返事しかしないので、痺れを切らしたのだ。当初の丁寧な喋り方はなりを潜め、やや砕けた喋り方になる。どうやらこれが彼女の素の口調のようだった。

有著火红头发的摩尼卡,突然这样说。无论问什么,西昂只是冷淡的回答,所以麻木了。当初的礼貌的说话方式隐藏了自己的风格,说话变得有点破碎。这好像是她真实的语气。

「え……?」

「哎……?」

 シオンはぱちぱちと目を瞬く。モニカが急に丁寧な口調を止めたことにも軽く面食らったが、誰かに意見されたことなんて生まれて初めての経験で驚いたのだ。

西昂眨巴着眼睛。对莫尼卡突然停止礼貌语调的事也感到很吃惊,不过,有生以来第一次被别人提意见感到驚訝。

「なんだ、驚いた表情もできるんじゃない。なにを聞いても無表情のままだから人形だと思ったよ。もう、やっと君の心を動かせた」

「什么呀,原來可以做出惊讶的表情阿。不管问什么都没有表情,我還以為你只是人偶。终于打动了你的心」

 モニカはシオンの表情が変化したことを確認すると、少しホッとしたような顔で最後におかしそうに笑った。

莫妮卡确认了西昂的表情变化后,稍微松了一口气,最后笑得很奇怪。

 何がおかしいのかシオンにはわからなかったが、可愛らしく笑った。

西昂虽然不知道有什么奇怪,但还是笑得很可爱。

 すると、モニカにつられたのか――、

于是,被莫妮卡帶走――


「…………」



 シオンがぎこちなく口許をほころばせ、笑顔を覗かせた。

西昂生硬地張開嘴角,露出了笑容。

「あー、笑えるんじゃん!」

「啊,能笑吧!」

 モニカがシオンを指さす。

莫妮卡用手指指着西昂。

「……え? そうなの?」



 シオンがびくっと身体を震わせる。笑ったことなんてほとんどなかったから、自分が笑っているのかわからなかった。

西昂搖了搖身体。因为几乎没有笑过,所以不知道自己在笑。

「そうだよ! 絶対いま笑った。笑った方がいいよ。貴方せっかく格好良いんだから」

「是啊!现在绝对笑了。笑一下比较好哦。你难得这么帅」

「ええと、ごめん」

「嗯,对不起」

 シオンはなんと言えばいいのかわからず、謝罪の言葉を口にする。

西昂不知该说什么好,嘴里说着道歉的话。

「ええ? 別に謝る必要はないけど……。もう、調子狂うなあ」

「啊?没必要道歉……。别发狂了」

 モニカは困ったようにぽりぽりと頬をかく。

莫妮卡难为情地咯噔咯噔地挠著脸

「……………………」



 シオンは再び沈黙する。

西昂再次沉默。

「……ねえ、二人でいる時はシオンって呼んでいい? 人がいるときは様をつけて呼ぶと思うけど」

「……喂,两个人在一起的时候可以叫西昂吗?不过有人在的时候加上稱呼,。」

 ふと、モニカが尋ねた。

突然,莫尼卡问。

「いいけど」

「可以」

 シオンはこくりと首を縦に振る。

西昂低着头。

「ありがとう、シオン。じゃあ私のことはモニカって呼んでいいよ」

「谢谢你,西昂。那么你可以叫我莫妮卡哦」

「え? うん」

「诶?嗯,嗯」

「………………」



 モニカはシオンに期待するような眼差しを向ける。

莫妮卡用期待的目光看著西昂。

「……何?」

「……什麼?」

 モニカにじっと見つめられて、シオンが少しドキッとして尋ねる。こんなに人から目線を向けられたのも、生まれて初めてだった。

被莫妮卡盯着,西昂稍微心动地问道。有生以来第一次被人这样看著。

「こういう時は私のことも名前で呼ぶんだよ」

「在这种时候也叫我的名字」

 と、モニカは少し唇を尖らせて言う。

莫尼卡稍微尖着嘴唇说。

「誰が? 誰を?」

「谁呢?是谁?」

「シオンが、私を。私のことも名前で呼んでいいって言ったでしょう?」

「西昂,我阿。我不是说过可以叫我的名字吗?」

「……うん」

「……嗯」

「じゃあ、ほら。私のことを名前で呼んで」

「那么,快點。叫我名字吧」

 今日初めて会ったばかりの相手なのに、モニカはシオンに屈託のない笑みを向ける。その笑顔がとても可愛くて、とても嬉しくて――、

明明是今天初次见面的对象,莫妮卡却对西昂露出了无忧无虑的笑容。那个笑容非常可爱,非常开心——。

「………………モニカ」

「…………莫尼卡」

 シオンは気恥ずかしそうに、モニカの名を呼んだ。

西昂害羞地叫了莫妮卡的名字。

「うん。なに、シオン?」

「嗯。什么,西昂?」

 モニカはニコニコと笑顔をたたえて返事をするが――、

莫尼卡笑嘻嘻的回答——

「え、何でもないけど」



 シオンは不思議そうに会話を打ち切る。家庭教師や使用人などと必要最小限の会話をするだけで、人と普通に会話をする経験がシオンには圧倒的に不足していたのだ。

西昂不可思意的打斷了对话。西昂只有与家庭教师和佣人等做必要的最小限度的對话,与人普通對话的经验对他來說压倒性地不足。

「も、もう……。言葉のキャッチボールが続かないなあ」

「已经……。對話无法继续下去啊」

 モニカはがっくりと項垂れる。

莫妮卡失望地垂下了头。

「……キャッチボール? なにそれ?」

「……投接球?那是什么?」

 シオンが疑問符を浮かべる。初めて聞いた言葉だった。

西昂臉上露出疑問的表情。这是第一次听到的话。

「え? キャッチボール?」

「啊?投接球?」

 言葉を口にしたモニカ自身も首を傾げる。

说话的莫妮卡自己也歪着头。

「今モニカが言った言葉だけど」

「莫妮卡現在說的話」


 どうやらモニカも『キャッチボール』という言葉を口にしたことを気づいていなかったようだ。

好像莫妮卡也没注意到她曾经说过『投接球』。

「私が……? ああ。私なんだか最近、無意識に変な言葉を言っちゃうらしいんだよねえ。何なんだろう?」

「我……?啊!我总觉得最近,无意识地说着奇怪的話哟。到底是為什么呢?」

 モニカは困ったように説明し、うーんと首を捻る。

莫妮卡扭了扭脖子,困惑地说道。

「へえ」

「嘿!」

 そういうこともあるのかと、あっさりと納得するシオン。

这样的事也有吗,西昂爽快地理解了。

「ま、気にしないで。それよりさ。シオンは何か趣味とかないの?」

「别介意。比起那個。西昂有什么兴趣吗?」

 モニカはあどけなく笑って気持ちを入れ替え、シオンに話を振る。

莫尼卡天真无邪地笑了,转换心情後向西昂说着话。


「趣味? 特にないかな」

「兴趣嗎?没什么特别的吧」

「えー? そんなことはないでしょ。普段は何をしているの?」

「诶?没有那样的事吧。平时在做什么?」

「普段? 読書と魔法の練習?」

「平時嗎? 讀書與魔法的練習?」

「うーん、男の子らしくないなあ。というより、どうして疑問形なの?」

「嗯,真不像男孩子啊。不如说,为什么是疑问句呢?」

「いや、それくらいしかしていないなあと思って」

「不,我想就只有那么一点点。」

「そんなことはないでしょ」

「没有那样的事吧」

「後はご飯を食べて寝るくらい?」

「之后就是吃饭睡觉吧?」

「あはは。なに、それ。それはみんなやっていることだよ」

「啊哈哈。那是什么啊?那都是大家會做的」

「そうだね」

「沒錯」

 おかしそうに笑うモニカを見て、シオンも笑う。

看到莫妮卡笑得很開心,西昂笑了。

 気がつけば少しずつ、シオンは普通にモニカと話せるようになっていた。モニカと話している内に、自然と笑顔が増えていた。

如果注意到一点点,西昂变得能普通地与莫妮卡说话。和莫妮卡说话的时候,笑容自然就會增加。


「本を読んでいるって言っていたけど、どんな本が好きなの?」

「你说你在看书,你喜欢看什么书呢?」

「……英雄ノアの大冒険」

「……英雄诺亚大冒险」

「それ私も好き! シオンもノアみたいになりたいの?」

「我也喜欢!西昂也想变的像诺亚一样吗?」

「それは、どうだろう」

「那又怎么样呢」

「私はなりたいよ。ノアみたいに強い戦士になって、外の世界を見て回りたいの。迷宮に潜ったりね。そうだ。ターコイズ王国は魔道の国だけど、シオンは何か武術を習っていないの?」

「我想成为。我想成为像诺亚那样强大的战士,环游外面的世界。潜入迷宫。对了。虽然達可易斯王国是魔道之国,但西昂没有学过什么武术吗?」


「剣術なら習っているけど、やっぱり魔法の方が得意かな」

「剑术的话我学过,但还是魔法比较拿手啊」

 モニカからの質問にもちゃんと答えられるようになっていた。

也变得能好好地回答莫妮卡的问题。

「へえ、男の子らしいこともしているんじゃない。私も剣術を習っているよ。一番得意なのは槍術だけど」

「诶,你也會做男孩子的事啊。我也在学习剑术哦。不過最擅长的是枪术」

「ヴァーミリオン王国は武の国なんだっけ?」

「瓦米利翁王国是擅長武術的国家吧?」

「そうだよ。……そうだ! ちょっと私と手合わせをしてみる?」

「是啊。……对了!要不要跟我較量一下?」

 モニカは得意げに頷き、シオンに対戦を申し入れる。

莫妮卡得意地点了点头,向西昂提出了对战。

「ええ? それはまずいんじゃないかな。モニカは女の子だし」

「啊?那樣不太好吧。莫妮卡是女孩子阿」

 怪我をさせたら大変だ。そう思ったのだが……。

如果受伤了就糟糕了。我是这样想的……。

「むっ。シオンが勝つって言うの? 確かにクリフォード兄さんにはまだ勝ち越せないけど、それ以外だと歳の近い男の子が相手でも一度も負けたことがないんだからね、私」

「哇。是说西昂会赢吗?确实,虽然还不能战胜克利福特哥哥,但是除此之外跟年龄相近的男孩子对手一次也没有输过。」

「え、そうなの? それはちょっと怖い……」

「啊,是這樣吗?这有点可怕……」

 なんてやりとりがあって、モニカの負けん気に押されて試しに手合わせをしてみることになるシオン。

經過这样的对话,西昂被莫妮卡的不服输的气势压倒,試圖嘗試一下。

 結果はシオンがこてんぱんに負かされて、モニカが槍の天才だと知る。

结果西昂被打败得落花流水,知道了莫尼卡是用枪的天才。

 だが、シオンの長所は魔法だ。その後に魔法を使用して見せると、モニカから「すごい、すごい」と手放しに賞賛される。

但是,西昂擅長的是魔法。之后使用魔法,被莫尼卡称赞說「好厉害,好厉害」。

 そうやって、対等な誰かと一緒に何かをする時間がとても嬉しくて、楽しくて……。だから――、

像这样,和对等的某人一起做某事的时间非常高兴,快乐……。所以——

 ――誰かと一緒に遊ぶって、こういうことなんだろうか?

——和谁一起玩,是这么回事吗?

 出会ったその日に、シオンはモニカに恋をした。人との話し方すら知らなかったのに、あっさりと、簡単に、初恋に落ちたのだ。

在相遇的那天,西昂爱上了莫妮卡。连跟人的说话方式都不太清楚,却很简单就坠入了初恋。



 人見知りで、孤独で、人との接し方がわからない少年が、恋をした。当の本人はそれが恋だなんて、知りもしなかった。けど、後から振り返ってみれば、それが初恋だったのだと、シオンは断言できる。

认生、孤独、不懂得与人交流方式的少年,恋爱了。当事人根本不知道那是恋爱。但是,之后再回首看看,西昂可以断言那就是初恋。

 これが、シオンとモニカの出会いだった。

这就是西昂和莫妮卡的相遇。

   ◇ ◇ ◇



 それから、シオンとモニカは互いの国を行き来して、数ヶ月に一度だけ、一週間か二週間ほど生活を共にするようになる。

然后,西昂和莫妮卡来往于彼此的国家,几个月一次,每次一个星期或两个星期左右的時間一起生活。

 シオンの日常には笑顔が増えた。以前とは比べものにならないほどに、笑顔が増えた。モニカがシオンと他者を繋げて、笑顔を増やしたのだ。

西昂的平日的笑容增加了。笑容增加了,是和以前无法相比的。莫妮卡把西昂和他人连接起来,並增加了笑容。

 相変わらず父や後妻と話をする機会はなかったけれど、モニカのおかげで半分血の繋がった妹のイリナと話ができるようになった。モニカの兄や妹も紹介してもらって、五人で大切な友達になった。

虽然还是没有和父亲、后母说话的机会,但多亏了莫妮卡才能和有著一半血緣關系的妹妹伊莉娜说话。还介绍了莫妮卡的哥哥和妹妹,五个人成为了重要的朋友。

 すべてはモニカのおかげだ。モニカが変えてくれたのだ。大きな城にひとりぼっちで、笑うことがなかったシオンを。そんなシオンの人間関係を。

一切都是托莫妮卡的福。莫妮卡帶來了改變。一个人在大城堡里,没有笑过的西昂。那样的西昂的人际关系。

 だから、シオンは努力した。剣術も、魔法も、勉強も、今までとは比較にならないほど真剣に学ぶようになった。モニカに褒めてもらいたかったから。

所以,西昂努力了。剑术,魔法,学习都变得认真到无法和以前相比的地步。因为想得到莫妮卡的赞扬。

 そうして、瞬く間に一年が過ぎると――、

然后,转眼间一年过去了——

「政略結婚なんかじゃなく、ちゃんと恋をして結婚しよう」

「不要搞什么政治婚姻,好好恋爱然后结婚吧!」

 シオンはモニカに思いを伝えた。モニカがいればシオンは幸せになれるから、モニカのことも幸せにできるよう頑張る。そう伝えて、告白した。

西昂把思念传达给了莫尼卡。只要有莫妮卡,西昂就能变得幸福,为了能给莫妮卡带来幸福而努力。那样传达,告白了。

 モニカには「シオン、なんだかすごく恥ずかしいことを言っているよ……」と困ったように言われたけど、シオンは本気だった。

莫妮卡说:「西昂,总觉得在说些很丢脸的话……」虽然被说很为难,但是西昂是真心的。


 モニカは終始照れくさそうにしていたけれど、最後は「もう、しょうがないなあ。ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願いします」と気恥ずかしそうに笑って頷いてくれて……。

莫妮卡始终看起来害羞,不过,最后「嘛,真是没办法啊。虽然是个冒失鬼,但还请多多关照”。」害羞地笑着点头……。


 ここから、シオンの人生はさらに大きく変わっていくはずだった。好きな人と一緒になり、毎日笑って幸せに生きる。

从这里开始,西昂的人生应该会有更大的变化。和喜欢的人在一起,天天幸福地笑著生活。

 そんな未来が当たり前のように訪れるはずだと、シオンは信じていた。モニカとの幸せが永遠に続いていくのだと、無根拠に信じていた。

西昂相信这样的未来理所当然会到来。无根据地相信和莫妮卡的幸福会永远持续下去。

 本当に、ここからのはずだったのだ。

本來,应该是从这里开始的。

 けど、シオンが告白し、モニカがターコイズ王国から祖国であるヴァーミリオン王国へ戻る道中に……。

但是,西昂告白,莫妮卡从達可易斯王国返回祖国的瓦米利翁王国的途中……。

 モニカは失踪する。

莫妮卡 失蹤了。

 シオンが十一歳の時だった。

是 西昂 十一岁的时候。

 永遠は続かないのだと知って、シオンは戦慄した。

西昂知道不会永远持续下去,因此战栗了。

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【名前】シオン・ターコイズ

【名字】西昂•達可易斯

【種族】ヒューマン

【種族】人類

【年齢】十一歳

【性別】男

【レベル】6

level】6

【ランク】0

rank】0

【基礎パラメーター】

【基础能力】

・膂力:E(18/100)

・敏捷:E(18/100)

・耐久:E(18/100)

・魔力:D(36/100)

【特殊パラメーター】

【特殊能力】

・魔法:A

【スキル】

【技能】

・魔の祝福

・魔之祝福

 特殊パラメーター『魔法A』の項目を追加し、基礎パラメーター『魔力』の等級を一つ上昇させる。また、レベルの上昇に伴う基礎パラメーター『魔力』の上昇値に大補正。

追加特殊能力『魔法A』的项目,使基础能力『魔力』的等级上升一級。同时,与level上升伴随的基础能力『魔力』的上升值大補正。
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本帖最后由 動漫Kirito 于 2019-11-18 22:23 编辑


未校對,有錯可以回復提出,招收翻譯、校對人員
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第3話 魔眼(前半)

モニカが失踪した。

莫妮卡失踪了。

 誰にも、何も言い残さずに、いなくなってしまった。ターコイズ王国からヴァーミリオン王国の帰国する道中、誰にも知られずに姿を消したというのだ。

对谁都没有留下任何话就消失了。在从達可易斯王國回到瓦米利翁王國的路上,无人知晓的消失了。

 いったい何が起きたというのか?

到底发生了什么事?

 モニカはどこへ行ってしまったのだろうか?

莫妮卡到底去哪里了?

 捜索隊は編制されたが、発見には至らず、時間だけが過ぎていき、やがて、国の上層部はモニカの捜索を諦めた。

虽然编制了搜查队,但是过了一段时间还是没有发现,不久,国家的上层放弃了对莫妮卡的搜索。

 しかし、シオンは諦めなかった。諦めるという選択肢はシオンにはなかった。誓ったのだ。結婚して、絶対にモニカを幸せにすると。

但是,西昂没有放弃。西昂没有放弃这个选择。他发誓了。结婚后,一定要让莫妮卡幸福。

 死んだと決まったわけではないのなら、探すしかない。簡単に諦めたら、きっとモニカに怒られる。

既然不並沒有確定死了,就必須尋找她。轻易放弃的话,肯定会被莫妮卡骂的。
 だから、シオンは城の外に広がる世界へ目を向けるようになった。そして、今まで以上に努力することにした。第一王子の立場では自由に城の外へ出ることはできないけれど、ただ腐るよりは遥かにマシだと思ったから。

因此,西昂开始关注城外广阔的世界。並且,决定比以前更加努力。作为第一王子,不能自由地出城,但是觉得远比腐烂要好得多。

 でも、周囲はそれを許そうとしなかった。

但是,周围的環境不予許這樣。

 シオンはモニカの代わりに、モニカの妹であるエステルと婚約させられることになる。エステルはモニカを通じて親しくなった仲で、シオンの数少ない友人だ。

西昂,和代替莫妮卡的莫妮卡的妹妹艾丝蒂尔订了婚。艾丝蒂尔是經由莫妮卡变得亲密的朋友,是西昂少有的朋友。

 エステルもシオンの気持ちは知っていてくれたから、無理しないでくださいと言ってくれた。

艾丝蒂尔也知道西昂的心情,所以要他不要勉强。

 けど、国同士が決めた話だから、当事者であっても拒絶はできず、表向きは婚約者として振る舞うことになる。

但是,因为是国家之间决定的事,即使是当事者也不能拒绝,表面上是作为未婚妻而行动。

 そうしてさらに時は流れ、モニカの失踪から二年が経ち……。
 シオンは十三歳になった。

然后时光流逝,莫妮卡失踪过去两年了……。
西昂已经十三岁了。


   ◇ ◇ ◇

 ある朝、ターコイズ王国の第一王子の寝室で。
 シオンがおもむろに目を開けて――、

某天早上,在達可易斯王国的第一王子的卧室里。
西昂慢慢地睁开眼睛——。


「またこの夢か……」

「又是这个梦吗……」

 ぽつりと、苦々しく呟いた。シオンは十三歳になってからここしばらく、頻繁に同じ夢を見るようになっていた。モニカに出会うまではよく見ていた夢だ。モニカに出会ってからは、あまり見ないようになってしまった夢でもある。

嘟哝着,苦涩。西昂从十三岁起就经常做同一个梦。这是在遇到莫妮卡之前经常做的梦。在遇到莫尼卡之后,变得不太常梦見的梦。

 いや、夢自体は見ていたのかもしれないが、モニカのことに夢中でさして気にとめていなかったのかもしれない。当時はモニカに相応しい相手になろうと、目を覚ますと毎日のように早朝訓練に励んでいたから。

不,说不定梦中的自己看着,不过,说不定因為对莫妮卡着迷而没有在意。當時,我想成為莫妮卡的好對手,所以睁开眼睛後,每天清晨都持續训练。

 まあ、早朝訓練は今でも行ってはいるのだが……。

嘛,清晨的训练现在还在进行……。

 何度も何度も同じ夢を見ているからだろうか。

可能是因为做了好几次相同的梦吧。

 当時は朧気に夢を見ていた程度のことしか思い出せなかったけど、昔よりは夢の内容を覚えている気がする。

虽然当时只是记得模糊地做着梦的程度,但感觉比以前还要记得梦的内容。


 それはやはりここではない違う世界で、生きている夢だ。

那果然是不同的世界,活生生的梦。

 だが、辛い夢だ。プレッシャーばかりで、嫌なことだらけで、楽しいことなんて何もない人生を過ごす夢だ。

但是,這是一個艰辛的梦。梦裡過著 尽是压力,尽是讨厌的事情,而沒有樂趣的生活。

 頑張っても褒められることなんてなかった。辛いことばかりの人生だった。たった一つ、楽しみにしていることもあったが、それも奪われた。

即使努力也不会得到表扬。人生只有艰辛。虽然只有一件事情让我很期待,但它也被剥夺了。

 だから、最後は……、最後は……。

所以,最后是……最后是……。

「また思い出せない」

「又想不起来」

 まるで靄がかかっているように夢の記憶が急速に薄れてしまう。シオンはもどかしそうに顔を曇らせた。

宛如雾霭笼罩一般,梦中的记忆急速淡薄。西昂不耐煩地低下了臉。

 自分の中に誰か、知らない誰かがいる。
 いや、いるかもしれない。
 その答えは自分にもわからない。思い出せない。

自己心中有誰,也有不認識的人。
不,也許有。
这个答案我自己也不知道。想不起来。


 だから、思い出したい。思い出して、自分が何者なのか、自分が誰なのか、それを知りたい。そんなことを、ふとした拍子にいつも思う。

所以,我想回想起来。想起来,我想知道自己是什么人,自己是谁。这样的事情,我总是在不经意间想到。

「……こんな夢ばかりみるのは、俺が俺以外の誰かになりたいからなんだろうか?」

「……會做这样的梦,是因为我想成为除我之外的其他人吗?」

 モニカの失踪から二年。いまだ生還の知らせは届いていない。国の上層部もとっくに忘れ去っているように振る舞っている。

莫妮卡失踪两年了。生还的消息还是没有收到。国家的上层也早已忘却。

 けど、きっとモニカはこの世界のどこかで生きている。シオンはそう信じている。だから、外の世界に出ていって、失踪したモニカを探しにいきたい。けど、第一王子の立場ではそれができない。

但是,莫妮卡一定在这个世界的某个地方活着。西昂这样相信着。所以,想去外面的世界寻找失踪的莫尼卡。但是,作为第一王子的立场,不能那样做。

 そんな現状がもどかしかった。外の世界に出られるのなら、別人にだってなりたい。

那样的现状令人着急。如果能走出外面的世界,寧願成为别人。

 自分以外の誰かとして生きる夢ばかり見るのは、そんな自分の願望が発露した結果なのかもしれない。

只做自己以外的某人活着的梦,说不定是那样的自己的愿望暴露的结果。

「…………」

 シオンは自虐的な笑みを覗かせると、視界に入ったサイドテーブルに置いていた小説を手に取った。

西昂露出自虐的笑容,拿起放置在进入视野的侧面桌子上的小说。

 表紙には「ノアの大冒険」と書かれている。それはモニカが好きな小説のタイトルで、シオンも子供の頃から憧れて読んでいた小説だ。

封面上写着“诺亚的大冒险”。这是莫妮卡喜欢的小说的标题,也是西昂从小就很憧憬的小说。

 何度も読み込んだ本である。お気に入りのシーンならそらんじることもできる。この本の感想を一日中語り合ったこともあったし、いつか二人で一緒に冒険に行こうと約束したこともある。

这是一本读了好几次的书。如果是喜欢的场景的话,也可以享受。我曾经整天谈论过这本书的感想,也曾约定过有一天两个人一起去冒险。

 二人の立場で外の世界に冒険に行くことがどれほど難しいのか、よく知りもしないまま……。

以两人的立场去外面的世界冒险是多么的困难,也不太清楚……。

「…………さて、訓練だ」

「…………那么,训练」

 シオンはサイドテーブルに本を置き直すと、朝の日課をこなすため、城内の演習場へと向かうことにした。どこか、つまらなさそうな声で……。

西昂重新把书放到旁边的桌子上,为了完成每天的早課,决定去城内的演习场。哪里,用无聊的声音……。

   ◇ ◇ ◇

 この世界は概ね、無駄に平和だ。

这个世界大体上是徒劳的和平。

 ターコイズ王国とヴァーミリオン王国を含む近隣諸国では、この数百年間、ただの一度も大規模な戦争が起きたことはない。国にとって大きな変革が起きたこともない。

包括塔科伊斯王国和瓦米利昂王国在内的近邻各国,在这数百年间,从未发生过一次大规模的战争。对国家来说没有发生过重大的变革。


 各国が共通に崇める『グリゴリ』という天使達が定めた聖典によって、国同士の大きな争いが禁じられているのだ。

根据各国共同崇拜的“格里戈里”这些天使们所制定的圣经,禁止国家之间进行大规模的斗争。

 しかし、それでも万が一に備えて他国への抑止力は必要だし、治安維持のための実力も必要だし、危険な生物も蔓延っているから、国は一定の費用を投じて軍を編成し続けている。

但是,为了以防万一,对其他国家的威慑力是必要的,为了维持治安,必须要有实力,危险的生物也在蔓延,国家投入一定的费用继续编制军队。

 だから、世界が平和でも力をつけることは無意味じゃない。理不尽な火種は至るところにあるのだから。

所以,即使世界和平,增强力量也不是没有意义的。因为不合理的火种到处都有。

 けど……。

但是……。

 自分が日課としてやっているこの訓練に意味はあるのだろうか?
 モニカを探すために外の世界に出たいのなら、他にもっとすべき努力があるのではないだろうか?
 シオンは最近、そんなふうに思う時がある。

自己作为每日必做的这个训练有意义吗?
为了寻找莫妮卡而想去外面的世界的话,不是还有其他更应该努力的事情吗?
西昂最近有时会这么想。


 二年が経った。モニカが失踪してから、二年が経ったのだ。だというのに、シオンはいっこうに外の世界に出られない。

两年过去了。莫妮卡失踪已经两年了。尽管如此,西昂却怎么也到不了外面的世界。

 外の世界に出て自由に動き回るために、城から脱走するという手段を除いておよそ考え得るあらゆる手段を模索して努力してきたが、どんなに努力をしても報われない。

为了到外面的世界里自由活动,除了逃离城堡这一手段以外,我摸索着大概能想到的一切手段努力着,但是无论怎么努力也无法得到回报。

 自分の努力は無駄なんだろうか?
 と、シオンはそんなことを思って、今日も演習場の敷地に入る。既に日が昇っているのか、目映い日差しが演習場を照らしていた。

自己的努力是徒劳的吗?
西昂这样想着,今天也进入了演习场。太阳已经升起来了,耀眼的阳光照耀着演习场。


「眩しい」

「耀眼」

 シオンは演習場の入り口で目映そうに眼を細め、無駄に平和な空を見上げた。

西昂在演习场的入口处眯起眼睛,徒劳地仰望着和平的天空。

 本当に、うんざりするほどに平和だった。

真的是,和平到让人厌烦的地步。
 続けて日差しから逃げるように視線を下げると、演習場内には高級そうなクロースアーマーにその身を包み、模擬剣を携えた一人の剣士が立っていて――、

从阳光中逃跑般的视线继续往下看,演习场内站着一位身穿豪華盔甲,手持模拟剑的剑士站在那里——。

「……おー、おはよう。クリフォード」
「……早上好。克利福特」

 シオンは幼馴染の友人に声をかけた。クリフォード・ヴァーミリオン。ヴァーミリオン王国の第一王子であり、モニカとエステルの兄である。

西昂对青梅竹马的朋友打了招呼。克利福特·瓦米利翁。瓦米利翁王国的第一王子,莫妮卡和艾丝蒂尔的哥哥。

 年齢はシオンの二つ上で十五歳。まだ成長途中で身体は出来上がっていないが、その剣技は既に最強の頂を射程に入れている。剣の天才だ。

年龄比西昂大两岁,十五岁。虽然在成長期身体还没有完全發育,但是劍術造詣已達到最高峰。剑的天才。

 そんな隣国王子のクリフォードがどうしてターコイズ王国の演習場にいるのか。それは昨日からクリフォードがターコイズ王国へ遊びに来たからで――、

那样的邻国王子的克利福特为什么在達可易斯王国的演习场呢?那是因为从昨天开始克利福特来到了達可易斯王国游玩——

「おはよう、シオン。待っていたよ」

「早上好,西昂。我一直等待着」

 クリフォードは嬉しそうに顔をほころばせ、シオンに語りかけてきた。

克利福特高兴地笑着对西昂说。

「うん。俺はなんだか無性に引き返したくなってきた」
「嗯。我不由自主地想要回去了」

 シオンは億劫そうに溜息をついて応じる。

西昂懒洋洋地叹了一口气。

「数ヶ月ぶりの再会なんだ。互いの腕前がどれだけ上がっているのか、手合わせといこうじゃないか」

「這是隔了数个月的再会。我们来比试看彼此的技巧有多高吧。」

「いや、昨日の晩餐で再会してたっぷり話をしたじゃないか。それに、剣術で戦ったら俺がお前に敵うわけがないだろう」

「不,昨天晚餐时我们再会时不是聊了很多吗?而且,如果用剑术来比試的话,我怎么可能与你为敌呢」

「細かいことはいいんだ。確かに剣術だけで戦ったら十回中十回僕が勝つ。けど、シオンはそこいらの剣士よりも動ける。そして、シオンの本領は魔法にある」

「细节什麼的不重要。确实,如果只用剑术比試的话,十次中十次我都会赢。但是,西昂比那边的剑士还要能动。并且,西昂的本领是在魔法」

 つまりは、剣と魔法を組み合わせて戦えば、シオンはクリフォードにも迫るということだ。

也就是说,如果把剑与魔法组合起来比試,西昂也会逼近克利福特。

「せっかく休暇を利用して隣国から来ているんだから、今日くらい休めばいいのに」

「好不容易利用假期从邻国来的,今天就该休息吧。」

「つれないことを言わないでくれ。僕はシオンと遊ぶためにエステルと一緒にターコイズまで足を運んだんだから」

「别说无情的话。我为了和西昂一起玩和艾丝蒂尔一起來到達可易斯」
「だったら違う遊びをしよう。ボードゲームとか」

「那就玩别的游戏吧。棋盘游戏什么的」

「それはそれで面白そうだけど、朝の手合わせもやろう。どうせ二人ともこの場で訓練をするんだから」

「那倒挺有意思,早上也碰碰头吧。反正两个人都在这里训练」

「朝からしんどいなあ」

「从早上开始就好累啊」


「しんどいのが嫌な奴は毎朝、早朝から訓練なんてしないさ」

「讨厌辛苦的家伙不会每天早上都从早上开始训练的」

 クリフォードはずばり断言する。

克利福特如此斷言。

「ははっ。俺はそれでもしんどいのは嫌だよ」

「哈哈。儘管如此我還是討厭辛苦」

 シオンが疲れたように笑って言う。

西昂好像累了似的笑著說。

「……頑張りすぎなんだよ、シオンは」

「……西昂你太努力了」

 クリフォードがぽつりと呟く。
克利福特嘟哝着。

「ん?」
「嗯?」

 シオンは少し眠そうな顔で首を傾げる。

西昂歪着头露出一副昏昏欲睡的臉。

「いや、なんでもない。直にエステルも来るはずだ。僕の次に相手をしてやってくれ」

「不,没什么。艾丝蒂尔也应该马上来了。作为我的下一个对手」

「ええ~? 朝からヴァーミリオンの戦兄妹と連戦とか、余計にしんどい……」

「啊~?从早上开始就和瓦米利翁的战兄妹连战啦,更加辛苦啦……」

「そう言うな。エステルもお前と手合わせするのを楽しみにやってきたんだから。こないだ会った時にシオンに近距離線で後れを取ったのが悔しかったみたいだ。今日は絶対に勝ってみせると息巻いていたぞ」

「别那么说。因为艾丝蒂尔也是很期待和你交手的。上次见面时在與西昂的交手中以些許之差落敗了,好像很不甘心。說今天一定要赢给你看。」

「あー、そうか……。なら、仕方がないか」

「啊,是吗……。那么,没办法了」

 エステルの名前が出ると、シオンは存外あっさりと受け容れた。他に思い人がいるにもかかわらず、姉の方を好いているにもかかわらず、妹と婚約者の関係にある。その事実が後ろ暗いのだ。

艾丝蒂尔的名字一出现,西昂就意外地爽快地接受了。但尽管有其他心人,尽管喜欢着姐姐,却仍然和妹妹订婚。那个事实背后是黑暗的。

 だから、ほんの少しだけ、後ろめたそうな影を覗かせた。クリフォードにも気づかれないくらいに……。

所以,只露出一点点内疚的影子。甚至连克利福特都没有注意到……。

「おいおい、僕との対戦は嫌がったくせに、エステルとの対戦はすんなり承諾するんだな」

「喂喂,明明讨厌和我的对战,但是和艾丝蒂尔的对战却輕易的就答应了。」

 クリフォードが少し戯けて指摘する。

克利福特稍微开玩笑地指出。

「エステルは婚約者だからな。いつもイリナの相手もしてもらっているし。あいつ、エステルのことを実の姉みたいに慕っているからな。そのお礼だよ」

「因為是艾丝蒂尔的未婚夫啊,所以總被得伊莉娜當作对手看待。那家伙,把艾丝蒂尔当做亲姐姐一样爱慕着。就是那个谢礼」


 シオンはふふんと笑って今の婚約者であるエステルのことを語り、先ほど一瞬だけ覗かせた後ろめたそうな影を完全に消し去った。

西昂突然笑着讲述了现在的未婚妻艾丝蒂尔的事,完全消除了刚才只露出一瞬间的内疚的影子。

「なるほどな。つまりシオンはシスコンってことだ」

「原来如此。也就是说,西昂就是個妹控」

 クリフォードはニヤリと笑って言う。

克利福特笑着说。

「……それはお互い様だろう、お兄様?」

「……那是彼此彼此吧,義兄?」

 シオンはふふんと頬を緩めて言い返す。

西昂突然放下脸颊反驳道。

「お兄様は止めてくれ。ゾワリとする」

「哥哥住手。別再爭吵了」

 途端に苦笑いするクリフォード。もしも将来シオンとエステルが婚姻を結べば、クリフォードはシオンの義兄になるのだが、時折シオンはこうやってクリフォードをからかう時がある。

克利福特瞬间陷入苦笑。如果将来西昂和艾丝蒂尔结为婚姻的话,克利福特就会成为西昂的义兄,但偶尔西昂也会这样戏弄克利福德。

「冗談はこのくらいにして、始めるか?」

「开玩笑差不多就到此為止了,可以開始了嗎?」

 シオンが嘆息し、クリフォードに水を向けた。

西昂叹了一口气,把水扔給了克利福特。

「ああ。もっと奥へ行こう」

「啊!再更進去裡面點」

 そうして、二人は演習場の入り口付近から奥へと移動する。ある程度動き回って派手に戦っても周囲に物的被害が出ないくらいの位置へ来ると――、

然后,两人从演习场的入口附近向里面移动。到了即使在某种程度上激烈地對決,也不会给周围带来物品破壞的位置——


「ここら辺でいいか」

「这邊行吗?」

 シオンが呼びかけた。

西昂呼籲。

「ああ。いつでもかかってきていいぞ」

「啊!随时都可以哦」

 クリフォードが向き直り、余裕のある表情で告げる。奢っているわけではなく、油断しているわけでもない。現にクリフォードには微塵も隙がなく、訓練用の模擬剣を手にしている。

克利福特转身,用從容的表情告诉他。并不是放水,但也不是疏忽大意。现在克利福特手里拿着训练用的模拟剑,没有任何缝隙。

「ふーん……、じゃあ!」

「哼……那么!」

 シオンはノーモーションで駆け出し、勢いよくクリフォードに模擬剣を振るった。

西昂毫不猶豫的衝上前,很有气势地向克利福德挥舞了模拟剑。

「おいおい、魔法は使わなくていいのか?」

「喂喂,不使用魔法吗?」

 クリフォードは自分の模擬剣で難なくシオンの一撃を受け止め、ふふんと笑って真正面から問いかける。

克利福特用自己的模拟剑輕鬆的地接住西昂的一击,呵呵地笑着从正面问道。

「剣だけでどこまでクリフォードと戦えるようになったのか確かめたいんだ」

「我想确认,只用剑能和克利福特战斗到什么程度」

「なるほどな。じゃあ、シオンが魔法を使うまで、僕も闘気は使わないでやろう」

「原来如此。那么,在西昂使用魔法之前,我也不要使用鬪氣」

 闘気。それは戦士の適性を持つ者の中でも極一部の者にしか発現しない希少なスキルだ。

鬪氣。这是在拥有战士适性的人中只有极少部分人才能发现的稀有技能。


 このスキルを保有している者は魔力を闘気と呼ばれるエネルギーに変換し、肉体に纏うことで己の限界を超えて基礎能力値を向上させたり、時には放出することで攻撃に転用させたりすることができるようになる。第一線で活躍する超一流の武人達はほとんどこのスキルの持ち主であると言われている。

持有此技能的人将魔力转换成被称为鬪气的能量,包覆在肉体上可以超越自己的极限,使其提高基础能力值,有时通过释放来转用于攻击。据说活跃在第一线的超一流的武士们几乎都是这个技能的持有者。

 なお、スキルとは属人的な特殊能力のことである。先天的に獲得しているものと、後天的に獲得するものがあり、魔法系の才能に偏っているシオンには魔力を闘気に変換して近接戦闘に生かすスキルを保有していない。

另外,技能是個人的特殊能力。有先天就获得的和后天才获得的,具備魔法才能的西昂没有具備将魔力转换为鬪气,使其在近戰中发挥的技能。

 けど――、

但是——

「はっ、言ってろ」

「哈,说吧」


 モニカに認めてもらおうと思ったあの日から、シオンが剣術と体術の鍛錬を起こった日は一日たりともなかった。

為了讓莫妮卡有招一日能認可他,西昂日以繼夜的持續锻炼剑术和体术。

 だから、シオンは闘気を使えなくとも一端の戦士だ。それを証明するかのように、シオンはクリフォードに臆することなく剣で手合わせを挑む。

因此,西昂即使不使用鬪氣也是一個战士。为了证明这一点,西昂毫不畏惧用剑挑战克利福特。


「シオンはすごいよ。魔道士でここまで剣を扱える奴を僕は知らない。また腕を上げたみたいだな」

「西昂好厉害哦。我不知道魔道士有能使用剑到这种程度的家伙。好像又能抬起手臂了」

 クリフォードはシオンの攻撃をいなし続けながら、感嘆して言う。

克利福特一边继续朝西昂的攻击,一边感叹道。

「本職の剣士様であるクリフォードに勝てた試しはないけど、なっ!」

「虽然没有战胜本职剑士克利福特的勝算,但是!」

 シオンが横薙ぎに思い切りのいい一撃を放つ。

西昂果斷的釋放出一技橫掃

「当たり前だ。僕はシオンが頑張り始めるよりもずっと前から、剣の鍛錬を続けてきたんだ。先天的なスキルも保有しているし、日常的に実戦経験も積んでいる。それでシオンに負けてたまるか」

「当然了。比起西昂的努力,我从很久以前就开始练习剑了。拥有先天的技能,也累積了日常的实战经验。所以我怎么能输给呢」

 クリフォードは軽くバックステップを踏んで、間合いスレスレの位置で攻撃を躱してしまう。

克利福特轻轻地往後踩一步,好不容易避开了攻击的位置。


「くそ、涼しい顔をしやがって……」

「可恶,一脸凉快……」

「そろそろ魔法を使ったらどうだ? 僕も闘気を使って戦ってみたい」

「差不多该用魔法了吧?我也想用鬪气战斗一下」

 恨めしそうにジト目になるシオンに、クリフォードがワクワクした面持ちで呼びかける。

克利福特以欢心雀跃的表情对看滿臉怨恨的西昂喊道。


「……まあ、剣術でクリフォードには及ばないことはわかったしな」

「……嗯,我明白剑术比不上克利福特的。」

 わかったというよりは、もとよりわかっていたことだが……。シオンは手隙の左手でぽりぽりと頭を掻くと、溜息をついて首を縦に振った。

与其说是明白了,倒不如说是本来就清楚的事情……。西昂用空閒的左手搔了搔頭,叹气的摇著头。

 魔法を使用して戦闘するために、後退してクリフォードと距離を置く。クリフォードは剣を握っていない左手で、ちょいちょいとシオンを挑発した。

为了使用魔法战斗,往后退与克利福特保持距离。克利福特用没握剑的左手,挑衅了西昂。

 直後、剣を握っていないシオンの左手に、魔法陣が浮かび上がり――、
紧接着,在西昂没有握着剑的左手上,魔法阵浮现出来——。


「風弾エアバレット」

「 風彈⟨ aer bullet⟩

 シオンはクリフォードに左手を向けて、呪文を詠唱する。すると、魔法陣から複数の風の弾丸が放たれ、クリフォードへと迫った。が――、

西昂将左手转向克利福特,咏唱咒文。于是,从魔法阵放出了复数的风的子弹,逼近了克利福特。但是……

「はあっ!」

「啊!」

 剣を構えたクリフォードが一喝すると、光のオーラのようなものが肉体から噴出されて、シオンの風弾が弾き消されてしまう。

架起剑的克利福特一喊,像光一样的东西从肉体中釋出,西昂的空气子彈被抵消了。

「げっ。一級とはいえ、闘気で攻撃魔法を防ぐとかアリかよ……」

「嘿。虽说是一级,但是用鬪气来防御攻击魔法还是有的……」

 顔を引きつらせるシオン。

西昂臉角搐。

「シオンの基礎パラメーターなら、三級までの攻撃魔法を使っても構わないよ。攻撃魔法じゃないならランクの制限もなしで大丈夫だ」

「西昂的基础能力的话,可以使用到三级为止的攻击魔法。如果不是攻击魔法的话没有限制等級也没关系。」

 クリフォードが不敵に笑って告げる。

克利福特忍不住笑着說道。

「いやいや流石にそれは……」

「哎呀哎呀哎呀,真不愧是那个……」


 と、顔を引きつらせるシオン。魔法には一級から十級までの順に階級が存在し、階級が上がるにつれて魔法の難易度や威力や規模が上がっていく。

就这样,西奧的脸部抽动着。魔法依照等級分為一级到十级,随着等级上升魔法的难易度和威力和规模也随之上升。

 使用者のステータスによっても威力は大きく左右されるのだが、今のシオンでも最下級の一級の攻撃魔法を使えば人を吹き飛ばすなり殺傷しうるほどの威力があるし、二級の攻撃魔法だと人を数人まとめて攻撃することも可能な事象が発動する。

根据使用者的能力,威力也会被大幅度地左右着,不过,现在的西昂用最低级的一级的攻击魔法也有把人吹飛或者杀伤的那样的威力,二级的攻击魔法發動對數人一起攻击發生這樣的事也是可能的。

 三級の攻撃魔法にもなるとさらに威力や規模が上がるので、とても個人に対し訓練で使用するようものではない。

至於三级攻击魔法后,威力和规模会进一步提升,所以对个人来说不是用来训练的。

「実は前にシオンと会った時からさらにレベルが上がったんだ。ランクも2になった」

「其实从之前和西昂见面开始,level提高了。rank也变为2了」


「なっ……、ラ、ランク2!?」

「什……等级2!?」

 シオンは唖然と目を丸くした。

西昂目瞪口呆。


 レベルやランクとは、この世界に生きる人類が天界から授かった聖なる加護のことだ。過酷な修練を重ねたり、死線を越えたりすることでレベルは一つずつ上がり、レベルが十上がることでランクも一つ上がっていくとされている。


level和rank是指这个世界的人类從天界所受到的神圣保佑。经过多次严酷的修炼,或跨越生死邊緣的情境下,level會上升一級,而level上升十等的話,rank会跟著上升一級。

 レベルの最大数は百で、ランクの最大数は十だと言われているが、人類でその領域にたどり着いた者はいないとされている。

據說level的最大数值是100,rank的最大数值是10,不过,在人类當中能夠达到那个领域的人被认为是不在的。

 レベルは数字が増えるにつれて上がりにくくなっていくからだ。歴史上、人類で確認された最高の数字がレベル80で、ランクが8だと言われている。

因为随着数字的增加,level越来越难上升。历史上,人类确认的最高数字是level 80,rank 是8。

 シオンの現在のレベルは9で、ランクは0である。そして、クリフォードのレベルは20で、ランクは2になったという。

西昂的当前level为9,rank为0。然而,克利福特level在20,rank为2。

 レベルが上がることで強さの指標となる基礎パラメーター値が上昇して強くなるのだが、ランクが上がるとスキルを獲得したり基礎パラメーター値に補正がかかったりとさらに強くなる。

由于level上升成为强度上升的指标的基础能力值变得强,不过,rank上升所获得的技能,对基础能力值进行補正的话变得更加强。



 同ランク内であればレベル差はあっさりとひっくり返ることも多いが、ランクが変わってしまうと基礎パラメーター値に明確な補正の差が出てしまうので、レベルの差を覆すのは一気に難しくなる。

如果是在同rank内的话,level差轻易地翻转的情况也很多,不过,rank变化了的话基础能力值的補正差別就會顯現出來,要一口气推翻level的差就會变难。

 すなわち、ランク0のシオンとランクの2のクリフォードの間にはランク二つ分の山が存在する。

也就是说,在rank0的西昂和rank2的克利福特之间存在两个rank的山。

「一級の攻撃魔法じゃもう闘気を纏った僕を傷一つつけることはできないぞ? 二級の攻撃魔法をまともに食らうと、闘気で防いでもかすり傷くらいは負うだろうけど」

「用一级的攻击魔法,並不能伤害已经充满鬪气的我吧?如果被二级的攻击魔法正面地攻擊的话,即使用鬪气防御也只会受到一点擦伤吧」

「それでもかすり傷とか。前から思っていたけど、クリフォードって本当に人間か?」

「尽管如此就只有擦伤而已。從以前就想过,克利福特真的是人类吗?」

「失敬だな。そういうシオンだってまだランク0なのに、魔力の基礎パラメーターはランク2相当の魔道士並みにはあるんだろ。だいぶ人間を止めていると思うぞ?」

「真没礼貌。这样的西昂虽然还只是rank0,但魔力的基础能力却和rank2的魔道士相當了吧。你已經超過了很多人了吧?」

 クリフォードは呆れ気味に言い返す。

克利福特講訴著他的感想。

「まったく……。じゃあ、望み通りにやってやるよ。魔力疑似強化イミテーティド・ハイパーフィジカル……、魔力疑似鎧イミテーティド・エナジーメイル」

「真是的……。那就如你所愿的去做吧。魔力拟似强化 仿·超物理……、魔力拟似铠甲仿·能量甲」

 シオンは小さく嘆息すると、身体に魔法陣を展開させるのと同時に呪文を詠唱して、新たに魔法を発動させる。

西昂轻微叹息后,在身体周圍展开魔法阵的同时咏唱咒文,发动新的魔法。

 前者は対象の肉体と身体能力を強化する魔法で、後者は対象の肉体を包み込むように光の障壁を張り鎧とする魔法だ。いずれも三級の魔法で、闘気と比較すると欠点もいくつかあるのだが、二つ合わせれば闘気と同じような芸当が可能となる。

前者是强化肉体和身体能力的魔法,后者是像包覆肉体一樣地展张开光的屏障作为铠甲的魔法。全都是三级的魔法,与鬪气比较的话也有几个缺点,不过,如果二者合起来的話是有可能發動与鬪气相同的功能的。

 シオンが闘気を扱うクリフォードと渡り合うためにはこの魔法が必須だった。

西昂为了与擅長鬪气的克利福特交锋这个魔法是必须的。


「魔法は便利だよなあ」

「魔法真是方便啊」

 クリフォードは魔法が発動するのを律儀に待ってやりながら、そんなことを言う。

克利福特一边等待着魔法的发动,一边说着那样的话。

「そっちだって闘気で肉体を強化して身体を守っているだろ。お互い様だ。というより、闘気の方がすぐに発動できるし、応用が利いて便利だろう、がっ!」

「那边也是用鬪气强化肉体来保护身体的吧。彼此彼此。与其这么说,不如说鬪气马上就能发动,应用方便吧,哎!」

 シオンはそう言うと、闘気を纏ったクリフォードに向かっていったのだった。

西昂这样说着,朝着充满鬪氣的克利福特走去。

================
【名前】シオン・ターコイズ

【名字】西昂•達可易斯

【種族】ヒューマン

【種族】人類

【年齢】13歳
【性別】男
【レベル】9

【level】9


【ランク】1

【rank】1

【基礎パラメーター】

【基础能力】

・膂力:E(27/100)
・敏捷:E(27/100)
・耐久:E(27/100)
・魔力:D(57/100)


【特殊パラメーター】

【特殊能力】

・魔法:A
【スキル】

【技能】


・魔の祝福

・魔之祝福

 特殊パラメーター『魔法A』の項目を追加し、基礎パラメーター『魔力』の等級を一つ上昇させる。また、レベルの上昇に伴う基礎パラメーター『魔力』の上昇値に大補正。


追加特殊能力『魔法A』的项目,使基础能力『魔力』的等级上升一級。同时,与水平上升伴随的基础能力『魔力』的上升值大補正。


================


================
【名前】クリフォード・ヴァーミリオン

【名字】克利福特・瓦米利翁

【種族】ヒューマン

【種族】人類

【年齢】15歳
【性別】男

【レベル】23

【level】23

【ランク】2(基礎パラメーター値に補正)

【rank】2(基礎能力補正)

【基礎パラメーター】

【基础能力】

・膂力:D(59/100)
・敏捷:D(59/100)
・耐久:D(29/100)
・魔力:D(29/100)
【特殊パラメーター】

【特殊能力】


・剣術:A
・闘気:A



【スキル】

【技能】

・天賦の剣才
 特殊パラメーターに『剣術A』の項目を追加。ランクアップ時の膂力と敏捷のパラメーターボーナスを1.5倍(30→45)。

・天赋的剑才
特殊参数追加『剑术A』的项目。等级上升时的膂力和敏捷的加成提高1.5倍(30→45)。

・成長大補正
 レベルアップの速度に補正。

・成长大补正
補正升级速度。

・魔力変換(闘気)
 特殊パラメーターに『闘気』の項目を追加。魔力を闘気に変換することで『膂力』『敏捷』『耐久』を一時的に向上させることができる。


・魔力变换(鬪气)
特殊参数追加『鬪气』的项目。通过将魔力转换成鬪气,可以暂时提高『膂力』『敏捷』『耐久』。

================









本帖最后由 動漫Kirito 于 2019-11-16 22:05 编辑


第4話 魔眼(後半)更新在30樓


本帖最后由 動漫Kirito 于 2019-11-18 14:34 编辑


第5話 尋問 更新於34樓


第6話 研究所 先占樓


招募翻譯人員一起翻譯(也可入群參訪?)


本帖最后由 動漫Kirito 于 2019-10-29 10:24 编辑


更名通知:本作更新名稱為『進擊的沒落英雄』北山10月28日的推文:昨日、近況ノートでもお伝えしたのですが『神眼英雄の幻想譚〜失踪した幼なじみが天使になっていた件〜』のタイトルを『進撃の没落英雄』に変更しました。また、カクヨム様にて最新21話を更新しましたので、どうぞご覧ください。



翻譯龜速中… 待11月中後,才有時間陸續更新…
翻譯人員招募中:QQ,群連結



第4話 魔眼(後半)
翻譯:動漫Kirito
校對:尚無
QQ群:神眼英雄之幻想譚~失踪的青梅竹馬成為天使的事件~
「そっちだって闘気で肉体を強化して身体を守っているだろ。お互い様だ。というより、闘気の方がすぐに発動できるし、応用が利いて便利だろう、がっ!」

「那边也是用鬪气强化肉体来保护身体的吧。彼此彼此。与其这么说,不如说鬪气马上就能发动,应用方便吧,哎!」

 シオンはそう言うと、闘気を纏ったクリフォードに向かっていった。その速度は一般的なランク0の人間が出せる速さを軽々と超えている。

西昂这样说着,朝着充满鬪氣的克利福特走去。
那个速度輕易的超过普通rank0的人能使出的速度。

 が、クリフォードは平然とその速度に反応していた。シオンが完全に距離を詰めてくる前に剣を構え、闘気を模擬剣に流し込んでいく。

然而,克利福特却迅速的做出反应。在西昂完全拉近距离之前准备好剑,把鬪气灌入模拟剑中。

 かと思えば――。

以为是――。

 一閃。前方一帯に向けて少し強めに闘気を放出して、接近してくるシオンごと吹き飛ばそうとした。それには数人程度ならまとめて吹き飛ばせる威力、魔法でいうと二級の魔法程度の威力が込められているが――、

一瞬間。向前方一带稍微放出强而有力的鬪气,打算连正要接近的西昂一起吹飛。这威力可以將數人一起吹飛、魔法等级二的魔法程度的威力——



「暴風エアバースト」

「暴风 ⟨aer burst⟩」

 シオンは咄嗟に二級の攻撃魔法を発動させて、クリフォードの闘気による攻撃を相殺した。演習場内には結界が張られていて内部の音が漏れにくくなっているので騒ぎにはならないが、かなりの衝撃音が演習場内に鳴り響く。

西昂立刻发动了二级攻击魔法,抵消了克利福特的鬪气。演习场内有结界,内部的声音很难外漏,所以不会引起骚动,但是相当大的冲击声在演习场内回响。


 二人の視界を土埃が覆った。直後、土埃の中からクリフォードが突進してきた。しかし、シオンはそれを読んでいたように――、

两人的视野被尘土覆盖了。紧接着,克利福特从灰尘中冲了过来。可是,西昂就像预知到了一样——



「石壁ストーンウォール」

「石壁〈Stone Wall〉」

 すかさず防御と攪乱のための魔法を使用した。シオンの足下に魔法陣が浮かび上がったかと思うと、呪文の詠唱に応じて十メートルは前方の地面から長方形状の壁が隆起して、クリフォードの進路を阻む。

西昂立刻使用了防御和扰乱的魔法。脚下会浮现出魔法阵,随着咒文的咏唱,十米前方地面隆起长方形状的墙壁,阻碍了克利福特前进的道路。



「っと」

「哆」


 クリフォードは壁の向こうにシオンが罠を設置していることを警戒して、咄嗟に足を止める。


克利福特怕西昂在墙的另一面设置了圈套,马上停下脚步警戒了起來。


「水球ウォーターボール」

「水球 ⟨water ball⟩」



 シオンは左手を右側にかざし、直径一メートルほどの水球を射出した。と、同時に、自身は左側へと打って出る。クリフォードの視界には石壁の裏側から左右へと躍り出る影が映ったはずだ。加えて――、

西昂把左手举向右侧,射出了直径一米左右的水球。同时,自己向左侧打出。克利福特的视野里映出了从石壁的後面左右跳出来的影子。再加上——



「石壁ストーンウォール」

「石壁〈Stone Wall〉」


 シオンは水球を放った方向に石壁をいくつか隆起させた。それらは目くらましとなり、クリフォードの意識と判断力を幾ばくか奪って、咄嗟の対応をわずかに遅らせる。

西昂向放出水球的方向隆起几个石壁。这些行為都令克利福特眼花缭乱,夺走了些许的意识和判断力,使得瞬间的对应迟緩。



「本当に多彩だな、シオンの戦い方は」

「西昂的战斗方式真是精彩豐富啊」

 クリフォードはワクワクしてたまらない子供みたいに、ふふんと笑う。その余裕ある笑みを見て――、

克利福特像个兴奋不已的孩子一样,呵呵地笑着。看着那悠闲的笑容——。


(本当、嫌になるな。自分の才能のなさが……)

(自己没有才能……真的,很讨厌。)

 シオンは内心で歯噛みする。仮にこのまま接近して近接戦闘を挑んだとして、勝てるビジョンが思い浮かんでこない。善戦はできるが、決定打に欠ける。自分には本当に剣の才能がないのだということがよくわかる。

西昂在心里咬牙。假设就这样接近,挑战近身攻擊的话,就无法想象有能战胜的機會。善战是可以的,但缺少决定的一擊。我知道自己真的没有剑的才能。



 というより、魔道士として戦うべき人間が、戦士タイプの相手と真っ向から接近戦を挑もうとしていることが異常なのだ。本来、徹底して距離を置いた上で遠距離から火力で一方的に相手を封殺するのが魔道士の正しい戦闘スタイルなのだから。

与其这样说,作为魔道士战斗的人,与战士类型的对手正面打挑战近身战的事是异常。本来,在彻底保持距离的基础上,用远距离的火力单方面封杀对手才是魔道士的正确战斗风格。

 しかし、だからといってクリフォードを相手に普通の魔道士として戦いを挑んだとすれば、善戦すら敵わないはずだ。クリフォード級の戦士となると、相手が魔法陣を構築して呪文を詠唱し、狙いを定め魔法が発動するまでの間に対策を講じることが可能だ。

但是,虽说如此,如果以克利福特为对手,作为普通的魔道士来挑战战斗的话,就连善战的人都敌不过。克利福特這種級別的戰士,能從对手构筑魔法阵咏唱咒文、瞄準目标到发动魔法为止的期間找到相應的对策。


 高速で動き回って距離を置きながら攻撃魔法を打ち続けても、三級の攻撃魔法でもクリフォードに対する決定打にはならない。やがてじり貧になって負けてしまうだろう。

即使在高速移动的同时保持距离並持續發動攻击魔法,三级的攻击魔法也不会成为对克利福特決定的一擊。不久就会变得贫乏而输掉吧。



 持たざる者が持つ者に勝利するためには、工夫して戦うしかない。曲がりなりにも善戦できているのは、シオンが魔法と一緒に剣を扱う道を選択したからだ。

未持有者为了战胜持有者,不得不设法来战斗。西昂即使勉强却仍能奋力一战,是因为选择同时使用魔法与剑的方式。

 ゆえに、シオンは今の自分ではまだ勝ち目がないと思っていても、あえて近接戦闘をクリフォードに挑む。そこに勝機があると信じて……。


因此,即使西昂认为现在的自己还没有胜算,也要跟克利福特打近身战。相信那里有胜机……。

「衝撃爆波ショックウェーブ・バースト」

「衝撃爆波⟨Shockwave burst⟩」

 シオンは突進しながら、強力な衝撃波を前方一帯に向けて射出する三級の攻撃魔法を発動させた。先ほどよりもだいぶクリフォードとの間合いが埋まった状態で、だ。

西昂一边突进,一边发动三级攻击魔法,向前方一带射出强力的冲击波。与克利福特之间的距离增加比刚才的还多。


「はあっ!」

「啊!」


 クリフォードはすかさず闘気を込めた斬撃を放ち、魔法を相殺した。が――、

克利福特立刻放出充满鬪气的斩击,抵銷了魔法。是……


「相変わらずすごい速度で魔法を発動させるな」

「像往常一樣,還是那麼快的發動魔法」


 クリフォードはすぐそこまで迫ってきているシオンが、さらに別の魔法を発動させている姿を捉えた。驚きと喜び、半分半分の表情でシオンを賞賛する。

克利福特马上捕捉到正往那邊逼近且同時發動魔法的西昂身影,並帶著又驚又喜的表情称赞西昂道。

「衝撃爆波ショックウェーブ・バースト」

「衝撃爆波⟨Shockwave burst⟩」


 シオンは疾駆する速度を微塵も緩めず、さらに同じ魔法を放った。両者の距離はわずか数メートル。ここまで接近して魔法を発動させることは実戦だとまずない。

西昂丝毫没有减缓疾驰的速度,并且放出了同样的魔法。两者的距离只有几米。接近这里发动魔法是实战首要

 魔道士が戦士を相手に自らここまで肉薄することがありえないし、魔法を発動させた本人にも被害が出かねないからだ。

因为魔道士不可能亲自削弱到这种程度以战士为对手,发动魔法的本人也有可能受到伤害。

「おっと……」

「哎呀……」

 衝撃の風圧に押されて、クリフォードの身体がわずかに後退した。シオンはその隙を見逃さずに、クリフォードに向けて模擬剣を振るう。

被冲击的风压压压迫,克利福特的身体稍微后退了。西昂不放过那个间隙,向克利福德挥舞模拟剑。

 だが、クリフォードは咄嗟に反応して剣を構えた。両者の模擬剣がぶつかり、甲高い音が演習場に鳴り響く。

但是,克利福特迅速作出反应,准备好了剑。两人的模拟剑相撞,尖锐的声音在演习场上回响。

 しかし――、

可是——

「はああっ!」

「啊!」

 シオンは突進の勢いを乗せて、受け止めたクリフォードごと剣を振り抜いた。

西昂乘着突进的氣势,与克利福特一起挥出了剑。

「っ……」

「鏘……」

 クリフォードの背中にドンと、衝撃が走る。

在克利福特的背上受到一陣衝擊。

 先ほどシオンが隆起させた石壁の一つに衝突したのだ。

撞到了刚才西昂使其隆起的石壁之一。

 不意の反動に、クリフォードに一瞬の隙ができる。シオンはそれを見越していたように、躊躇なく接近して追撃を試みた。

由于突然的行动,克利福特产生了一瞬间的间隙。西昂似乎预料到了这一点,毫不犹豫地接近并尝试追击。

 ――これを狙っていたのか!?

 ――你瞄準這個嗎!?



 やっぱりシオンの戦い方は面白い。クリフォードはそう言わんばかりに、ニヤリと笑みを浮かべる。シオンの行動には一つ一つにちゃんと意味があるのだ。

果然西昂的战斗方式很有趣。克利福特露出微笑,仿佛如此說道。西昂的每一个行动都有它的意义。

 視野が広いとでも言えばいいのだろうか、周りをよく見て考えて動いている。真っ向から斬り合えば十回中十回クリフォードが勝利するが、意表を衝かれることが多くてとても勉強になる。

可以说视野开阔是好事,仔细观察周围并思考着行动。如果从正面互相斩杀十次中十次克利福特胜利,不过為了出奇致勝非常努力修煉。


 ――けど、まだ負けてはやれないな。

——但是,还不能输啊。

 クリフォードはフッと口許をほころばせると、さらなる闘気を解放した。シオンはもうすぐ目の前に迫っている。この瞬間――、

克利福特張開嘴微微吸一口氣,释放了新的鬪气。西昂快要到了。这一瞬间——



「あー、くそ」

「啊,可恶」

 シオンは自分の負けを確信した。勝てるビジョンが思い浮かばない。刹那、どうすればいいのか考えて、悪あがきを試みるが――。

西昂确信自己会输。沒有能赢的想法。刹那,思考着该怎么办,尝试着挣扎——。


 直後、シオンが手にしていた模擬剣が宙を舞った。

紧接着,西昂手中的模拟剑在空中飞舞。

「……天才め」


「……天才」




 シオンは両手を挙げて、恨めしそうに呟く。

西昂举起双手,抱怨似的嘟哝着。


「シオンは魔法の天才だろ。それに、剣術も十分に秀才の域にあるよ」

「西昂是魔法的天才吧。而且,剑术也十分优秀。」

 クリフォードが困ったように言った。

克里福特好像很为难。


「凡人さ。クリフォードと戦うとそれを思い知らされるよ」

「和克利福特战斗後就能知道吧。只是凡人」

 自嘲してぼやくシオン。

西昂自嘲地的嘟哝。

「シオンみたいな凡人がいてたまるか。むしろ変人……いいや変態だろ。ちょっと気持ち悪いくらいに」

「像西昂这样的凡人怎么能容忍呢?倒不如说是怪人……不,是变态吧。有点恶心」

「なっ、ひどいな!?」

「哎,太过分了!?」

「遠距離戦を専門とする魔道士が、近接戦闘を専門とする剣士に剣術で戦いを挑んでくるんだ。十分変人だろ」

「以远距离战为专业的魔道士,以近身戰专业的剑士挑战劍術。真是个怪人啊」

「いや、そう言われると確かに変人だとは思うけど……」

「不,被这么一说确实觉得是个怪人……」

 ぐうの音も出なかった。すると――、

一声不响。于是――


「けど、僕は変人なシオンが好きだよ」

「但是,我喜欢身為怪人的西昂」


 クリフォードはおかしそうに告げる。

克利福特很奇怪地訴說著。

「なんだよ、気持ち悪い」

「什么嘛,真恶心」

 シオンはあからさまに引いた眼差しでクリフォードを見た。すると――、

西昂用明朗的眼神看了克利福德。于是――

「こらあー!」

「喂!」

 演習場の入り口から、十代前半と思われる少女の声が響いてきた。

从演习场的入口,传来了15歲的少女的声音。

「……げっ」

「……嘿」


 シオンが声の聞こえた先に視線を向けて、しまったという顔になる。そこには三つ年下で半分血の繋がった妹のイリナが怒りの形相を浮かべて立っていた。すぐ隣には一つ年下でシオンの婚約者であるエステルの姿もある。

西昂把视线投向了听到声音的前方,变成了一张满不在乎的表情。在那里,比自己小三岁,还有一半血缘关系的妹妹伊丽娜浮现出愤怒的样子。旁边有一个比自己小一岁西昂的未婚妻艾丝蒂尔。

 イリナはエステルに抱きかかえてもらいながらシオン達に近づいてきた。エステルは闘気で肉体を強化したのか、イリナを抱えているのにかなりの速度で疾駆して近づいてくる。

艾丝蒂尔一邊抱住伊莉娜,一边接近西昂他們。艾丝蒂尔可能是使用鬪气强化了肉体,明明抱着伊丽娜却以相当快的速度飞奔接近。

「二人とも、やりすぎ!!」

「你們两个,都做得太过分了!」

 イリナはすぐ傍にたどり着くと、エステルに抱きかかえてもらった状態で二人を注意した。

伊丽娜马上到达旁边,兩人注意到了 伊莉娜是被艾丝蒂尔抱著的状态。

「や、やりすぎって何を? 俺達は訓練していただけだぞ」

「哎呀,什麼做过头了?我们是在训练哦」

 薄々と怒っている理由は察しつつも尋ねるシオン。

西昂虽然稍微察觉到她生气的理由,但还是问她。

「訓練なのに、本気でやりすぎ! 演習場をメチャクチャにして!」

「明明是训练,但是认真过头了!把演习场弄得乱七八糟!」

 イリナはビシッと指さしてシオンを咎める。

伊莉娜手指着西昂责备他。

「いや、演習場は直すけど。俺らも日々成長しているし、久々の手合わせだったから加減が利かなかったというか、つい熱が入ったんだよ。なあ、クリフォード」

「不,演习场會復原的。我们也每天在成长,因为是久违的比試,所以沒辦法控制,不知不觉中热血沸腾了。啊,克利福特」


 シオンは狼狽して弁明し、クリフォードに助けを求めた。

西昂慌张地解释,並向克利福特求助。

「うん、まあ」

「嗯,哎呀」

 クリフォードはちょっぴりバツが悪そうに、言葉少なに首を縦に振る。

克利福特並沒有說話,難為情的點頭答應。


「もう」

「已經」

 と、イリナは深く溜息をつき、むうっと唇を尖らせる。

伊莉娜深深地叹气,嘟起了嘴唇。

「そんなに怒るなって。可愛い顔が台無しだぞ?」

「别那么生气。可爱的脸都被糟蹋了喔?」

「なっ……。お、お兄ちゃんの変態!」

「什……。哥哥是变态!」

 イリナは一瞬言葉を失い、顔を真っ赤にして叫んだ。

伊莉娜一瞬间說不出來,脸红着叫了起来。

「何で!?」

「为什么!?」

 今日は変態呼ばわりされてばかりだと、シオンはショックを受ける。

如果今后总是被叫做变态的话,西昂会受到打击。

「許嫁のエステル姉さんが目の前にいるのに、妹を可愛いとか言う人は変態です。変態のロクデナシです」

「在未婚妻艾丝蒂尔姐姐眼前,说妹妹可爱的人是变态。是变态的萝莉控」

「ええ~?」

「啊~?」

 困ったように頬をかくシオン。すると――、

西昂困惑地挠着脸颊。于是 ――

「シオンさん、怪我はありませんか?」

「西昂,没有受伤吗?」

 エステルが近づいてきて、心配そうにシオンの顔を覗き込んでくる。

艾丝蒂尔接近了,看起来担心地窥视西昂的脸。


「あ、ああ。心配してくれてありがとう。大丈夫だよ」

「啊,啊。谢谢你为我担心。不要紧的」

 シオンは少しドキッとして返事をした。エステルの顔を見るとモニカの顔がちらつくことがある。

西昂有点心動的回答。看到艾丝蒂尔的脸有種看到莫妮卡的臉錯覺。


 お転婆なモニカと、お淑やかなエステル。性格はだいぶ違うが、顔つきは姉妹だからよく似ている。髪の色も同じ紅色でそっくりだ。

调皮的莫妮卡和淑女的艾丝蒂尔。虽然性格大不相同,但因为是姐妹所以长相很像。头发的颜色也同样是红色。

 だから、ふとした拍子にエステルと視線が合うと、なんだか無性に気まずい気持ちになってしまう。

因此,偶然間與艾丝蒂尔视线相合的话,总觉得变得难为情了。

 エステルは底抜けに性格が良い子なのだ。許嫁になったシオンがいまだモニカに想いを寄せているとわかっていても、嫌な顔一つしないで接してくれる。

艾丝蒂尔是个性格非常好的孩子。虽然知道婚約者的西昂现在依然对莫妮卡寄予了感情,但是她一点也不厌恶地对待。

 俺はこの子の許嫁でいいのだろうか? そう思うことがよくある。

我可以做这孩子的未婚妻吗?经常这样想。

「……本当ですか?」

「……真的吗?」

 エステルは心配そうにシオンの顔を見つめ続ける。

艾丝蒂尔担心地继续凝视着西昂的脸。

「ああ」

「恩」

 シオンは困り顔で頷いた。すると――、

西昂困惑地点了点头。于是――

「僕の心配はしてくれないのか、エステル?」

「你不担心我吗,艾丝蒂尔?」

 クリフォードが軽く肩をすくめて尋ねる。

克利福特轻轻地耸着肩膀问道。

「兄さんは人外だからいいんです」

「哥哥是外人所以没关系」


「ひどいな、妹よ……」

「太过分了,妹妹……」


 一瞥すらされず、さらりと答えられて、ショックを受けるクリフォード。ちょっぴり天然なところもあるエステルだった。

一眼也不看,爽快地回答,受到致命傷害的克利福特。是一點艾丝蒂尔天真的地方。

「…………えっと、そんなに見つめられても困るんだけど、エステル」

「…………欸兜,你那样盯着我會很困擾,艾丝蒂尔。」

 少し呆けたような顔で、いまだ見つめ続けてくるエステルに、シオンが気まずそうに言う。

面对稍稍有些惊讶的脸庞,仍在凝视着的艾丝蒂尔,西昂看起来很尴尬地说道。

「あっ、ご、ごごご、ごめんなさい」

「啊,对…对…對,对不起」

 エステルはなぜか顔を赤くし、慌てて謝罪する。イリナはそれを見て「お兄ちゃんの鈍感」と呟く。一方で苦笑するクリフォード。

艾丝蒂尔不知为何脸红,慌忙道歉。伊莉娜看到后嘟哝着「哥哥 迟钝」。一旁克利福特苦笑著。

「いや、謝る必要はないよ。クリフォードとは手合わせから、次はエステルの番かな?」

「不,没必要道歉。与克利福特比試後,再來不是輪到艾丝蒂尔吗?」

「お相手いただけるんですか?」

「可以作為比試對手嗎?」

 シオンが水を向けると、エステルの顔がみるみる明るくなる。

西昂用話引導,艾丝蒂尔的脸变得明亮起来。

「ああ。そのために訓練用の槍を持ってきたんだろ」

「嗯!所以才拿来训练用的枪的吧」

「は、はい」

「是、是」

 エステルは嬉しそうな顔のまま、はにかんで頷く。

艾丝蒂尔露出高兴的表情,害羞地点头。


「じゃあ、私達は退散しましょうか、クリフォード兄さん」

「那么,我们先走吧,克利福特哥哥」


「ふふ。そうだね」

「呵呵。是啊。」

 イリナは何か気を利かせたのか、クリフォードの背中をそそくさと押した。クリフォードもしたり顔で退散していく。

伊莉娜好像很机灵,迅速地推着克利福特的后背。克利福特也笑著脸離去。

「何なんだ、あいつら?」

「什么啊,那些家伙?」

「さあ……?」

「那麼……?」


 シオンとエステルは揃って首を傾げた。

西昂和艾丝蒂尔一起歪着头。


「まあいいや。やろうか」

「算了不管了。干吧!」

「はい!」

「好的!」

 エステルが弾んだ声で返事をする。

艾丝蒂尔用激动的声音回答。

 突然だが、天啓、と呼ばれる事象がある。それはすなわち、世界を司る天使達グリゴリの福音だ。

虽然很突然,但也有被称为“天启”的现象。那就是掌管世界的天使们的福音。

 例外もあるので明確な発動条件はわかっていないのだが、一般的にはステータスの変化……、すなわちレベルが上がったり、ランクが上がったり、後天的に新たなスキルを獲得する時に授かると言われている。

因为也有例外,不明白明确的发动条件,但是一般来说地位的变化……也就是level上升、rank上升、后天获得新技能时授予的授予技能。

 だから、それは突然に、本当に突然に、舞い降りる。人の人生を変えてしまうことすらある。例えば、そう、こんなふうに――。

所以,它突然,真的突然,飞舞下来。甚至会改变人的人生。比如,这样,像这样——。

 ――シオン・ターコイズ(NPC)のレベルが10へ上昇します。レベル10への到達に伴い、シオン・ターコイズ(NPC)のランクが0から1へと上がります。

——西昂•達可易斯(NPC)的level上升到10。随着level10的到达,西昂•達可易斯(NPC)的rank从0上升到1。

 ――ランクの向上により新たなスキルが開花。スキル『魔眼・魔導王の眼』を獲得します。

——随着等级的提升,新的技能也开花了。获得技能『魔眼·魔导王的眼』。

 ――エラー。シオン・ターコイズが通常のNPCでは獲得不可能なSランクのスキルを獲得しようとしています。

——错误。西昂•達可易斯打算获得通常的NPC不可获得的S等级的技能。

 ――エラーの検出を行います。副管理者グリゴリの権限により、シオン・ターコイズのデータを閲覧します。

——检测错误。根据副管理员格林格的权限,浏览西昂•達可易斯的数据。

 ――エラー要因の検出中。

——正在检测错误因素。

 ――判明。シオン・ターコイズ(NPC)のデータに『ノアズアーク』の情報が内蔵されていることを確認しました。

——判明。已确认西昂•達可易斯(NPC)的数据中内置了『诺亚兹瓦克』的信息。

 ――シオン・ターコイズ(NPC)の肉体には二つの魂が宿っています。『転生法』の貴重な実験体として利用を推奨。さらに精査します。

——西昂•達可易斯(NPC)的肉体中寄宿着两个灵魂。作为『转生法』的贵重的实验体推荐利用。再仔细检查。

 ――エラー。管理者権限アドミニストレータによるロックを確認。堕天使グリゴリの権限ではシオン・ターコイズに内包されているプレイヤー情報を閲覧することはできません。

——错误。确认管理员权限由Administrata锁定。堕天使格里戈利的权限不能阅览西昂•達可易斯裡的玩家信息。

 ――警告。シオン・ターコイズ(NPC)は『熾天使セラフ』の因子を持つ疑いあり。シオン・ターコイズ(NPC)は『熾天使セラフ』の因子を持つ疑いあり。

——警告。西昂•達可易斯(NPC)有持有『炽天使serafe』的因子的疑问。西昂•達可易斯(NPC)有持有『炽天使serafe』的因子的疑问。

 ――エラーの検出を終了します。当該システムエラー情報は堕天使グリゴリへ報告した後、『ダアト』と共有します。

——结束检测错误。该系统错误信息报告给堕天使格利戈里之后,与『达阿特』共享。

 それは突然、終わりを告げる鐘のように、シオンの脳裏に鳴り響いた。

它突然像宣告终结的钟声一样,在西昂的脑海中回响。

「なんだ、これは……天啓?」

「什么,這是……天启?」



 今までもレベルが上がった時に何度か天啓を授かったことはあるが、妙だった。今までに得た天啓はもっと簡素だったし、よくわからない言葉もたくさん混じっているし、この天啓は何かおかしいのではないか? シオンはそう思った。

到现在level提高了的时候也受過几次天启,不过,奇怪。至今为止得到的天启更加简单,也混杂着很多不太明白的词语,这天启是不是有点奇怪呢?西昂这样想。

 だが、知りもしない情報が続々と頭の中に思い浮かんできて、じっくりと天啓に耳を傾けている余裕がない。

但是,脑海中不断浮现出一些不知道的情报,没有时间仔细倾听天启。

 それどころか、脳内に浮かび上がる光景は次第に情報量を増していき――、

不仅如此,脑海中浮现的情景也会逐渐增加情报量——

「うわああああああっ!」

「哇啊啊啊啊啊!」

 シオンの両眼に、魔法陣のような文様が浮かび上がった。かと思えば、シオンは絶叫する。頭の中が真っ白になる。前が見えない。そんな中で――、

西昂的双眼中浮现出魔法阵般的图案。刚一想到,西昂就尖叫起来。脑袋里一片空白。看不见前方。在那之中――、

「シオンさん! シオンさん!!」

「西昂! 西昂!」

「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」

「哥哥!哥哥!」

「イリナ! すぐに陛下のもとへ! シオンに天啓が下って何かのスキルに覚醒したと報告するんだ。そのまま意識が混濁状態になったと」

「伊莉娜!马上去向陛下报告,西昂在天启下好像有什么技能觉醒了。就这样意识变得混浊」


「う、うん!」

「嗯…嗯!」

 自分の傍でエステル達が慌てて何か言っている声だけが聞こえてきた。そして、やがてはその声も聞こえなくなり、シオンの意識は途切れる。

只听得见艾丝蒂尔他们在自己身旁慌张说着什么。并且,不久那个声音也变得听不见,西昂的意识中断。

   ◇ ◇ ◇



 カチ、カチと、ゆっくり音が鳴る。時が進む音が鳴る。モニカの失踪以来、止まり続けていたシオンの時計が進み出したのだ。

咔嗒、咔嗒、慢慢地发出声音。时光流逝的声音响起。自从莫尼卡失踪以来,一直靜止的西昂的表开始前进。

 結果、シオンはある意味で願いへと近づき、ある意味で願いから余計に遠ざかる。

结果,西昂在某种意义上接近了愿望,在某种意义上离愿望更加遥远。


 だけど、それでも……。

但是,即便如此……。

 シオンは生きる。誰よりも、まっすぐと進んでいく。足掻いていく。何かを間違えてしまった、この世界の中で。


西昂活着。比谁都要笔直地前进。挣扎下去。在这个世界里,搞错了什么。


================

【名前】シオン・ターコイズ

【名字】西昂•達可易斯


【種族】ヒューマン

【種族】人類


【年齢】13歳

【性別】男

【レベル】10

【level】10


【ランク】1

【rank】1


【基礎パラメーター】

【基础能力】

・膂力:E(60/100)

・敏捷:E(60/100)

・耐久:E(60/100)

・魔力:D(90/100)

【特殊パラメーター】

【特殊能力】


・魔法:A

・魔眼:S

【スキル】

【技能】

・魔の祝福

 特殊パラメーター『魔法A』の項目を追加し、基礎パラメーター『魔力』の等級を一つ上昇させる。また、レベルの上昇に伴う基礎パラメーター『魔力』の上昇値に大補正。

・魔之祝福
追加特殊能力『魔法A』的项目,使基础能力『魔力』的等级上升一級。同时,与水平上升伴随的基础能力『魔力』的上升值大補正。


・魔眼・魔導王の眼

 特殊パラメーターに『魔眼S』の項目を追加。魔眼発動時には六級魔法までの鑑定、魔法陣構築速度の大上昇、魔力消費量の大軽減、五級魔法までの詠唱破棄などの恩恵を受ける。

・魔眼・魔導王之眼

特殊参数追加『魔眼S』的项目。魔眼发动时可以得到六级魔法的鉴定、魔法阵构筑速度的大上升、魔力消费量的大减轻、到五级魔法为止的咏唱废弃等恩惠。
================




================

【名前】クリフォード・ヴァーミリオン

【名字】克利福特・瓦米利翁

【種族】ヒューマン

【種族】人類

【年齢】15歳

【性別】男

【レベル】23

【level】23

【ランク】2(基礎パラメーター値に補正)

【rank】2(基礎能力補正)


【基礎パラメーター】

【基础能力】

・膂力:D(59/100)

・敏捷:D(59/100)

・耐久:D(29/100)

・魔力:D(29/100)

【特殊パラメーター】

【特殊能力】

・剣術:A

・闘気:A

【スキル】

【技能】


・天賦の剣才

 特殊パラメーターに『剣術A』の項目を追加。ランクアップ時の膂力と敏捷のパラメーターボーナスを1.5倍(30→45)。

・天赋的剑才
特殊参数追加『剑术A』的项目。等级上升时的膂力和敏捷的加成提高1.5倍(30→45)。


・成長大補正

 レベルアップの速度に補正。

・成长大补正
補正升级速度。

・魔力変換(闘気)

 特殊パラメーターに『闘気』の項目を追加。魔力を闘気に変換することで『膂力』『敏捷』『耐久』を一時的に向上させることができる。

・魔力变换(鬪气)
特殊参数追加『鬪气』的项目。通过将魔力转换成鬪气,可以暂时提高『膂力』『敏捷』『耐久』。


================





本帖最后由 動漫Kirito 于 2019-11-18 14:33 编辑


第5話 尋問

翻譯:動漫Kirito
校對:尚無

 シオンが生まれ育ったターコイズ王国のどこかで。

在西昂出生成长的達可易斯王国的某个地方。


「ん……」

「嗯……」

 シオンが意識を取り戻す。

西昂恢复意识。

 喉はカラカラだった。

喉咙干巴巴的。

 胃は空腹だった。

肚子饿了。


 頭の中がひどくぼんやりしている。

脑袋里非常模糊。

 それでも、薄らと目を開ける。

尽管如此,还是微微睁开眼睛。

「んあ……」

「嗯……」

 眩しい。

好耀眼。

 景色がぐにゃりと歪んでいた。真っ白だ。

景色微微歪斜。雪白的。

 ――ここはどこだ?

——这里是哪里?

 意識を失う前の記憶が曖昧だが、城の演習場でエステルと手合わせをしようとしていた気がする。そうしたら何か声が聞こえてきて、頭の中が真っ白になって……。

虽然失去意识之前的记忆很模糊,但是記得在城堡的演习场和艾丝蒂尔待在一起。然后听到了什么声音,脑子里变得一片空白……。

 そこから、そこから先は……。

从那里,先是……。

 わからない。何が起きてどうしてここにいるのか、わからない。

不知道。不知道发生了什么事,为什么会在这里。

 現状を確認しなくては。

必须确认现状。

「あう……」

「啊……」

 シオンは身体を動かそうとしたが、身動きが取れなかった。手足が重い。ジャリッと金属質な音がする。すると――、

西昂想要活动身体,但是身体动弹不得。手脚沉重。发出嘎吱嘎吱的金属声。于是――

「おい。聞こえているか?」

「喂。听到了吗?」

 誰か、成人しているであろう男性が、シオンに語りかけてきた。

有位成年男性向西昂搭话。

「あう? あい」

「啊?嗯」

 シオンは視点の定まらない目をして、ろれつの回らない声で返事をする。

西昂用眼神漂浮不定,语无伦次地回应。

「ちっ、自白剤を嗅がせすぎたか。聴き取りにくい。おい」

「哎,你闻过多自白劑了吗?听不清楚嗎。喂」

 誰かが舌打ちした。意識を確かめるためなのか、ぱちんと、軽く頬をぶたれた。

有人咂嘴了。也许是为了确认自己的意识吧,啪的一声,轻轻地拍了下脸颊。

「いいよ。そのままで。質問の内容は理解できているみたいだ。尋問を開始しよう」

「好啊。就那样。質问的内容好像已经理解了。开始質问吧」

「わかった」

「我明白了」

 大人の女性の声が聞こえた。いったい誰の声だろう? 聞いたことがあるような、ないような……。そう思っていると――、

听到了成年女性的声音。到底是谁的声音?好像有听過,又好像没有……。这么想著——

「シオン坊や。なあ、シオン坊や。私から質問だ。熾天使セラフと呼ばれる天使達に心当たりはあるかい?」

「西昂小子。喂,西昂小子。是我在質问。被称作炽天使serafu的天使们知道嗎?」

 女性がシオンに尋ねてきた。

女性问著西昂。

「えらふ?」

「erafu?」

「そうだ。熾天使という言葉に聞き覚えがないか、よく思い出すんだ」

「对了。“炽天使”这个词是不是很常聽到嗎?馬上就想起来了。」

「………………そういえば、さっき、れんけい? で、きいたきがする?」

「………………那么说来,剛剛,有收到?甚麼聯絡嗎?」


 シオンはしばし黙考すると、少しだけ首を傾げて答えた。

西昂沉默了一下,略微歪着头回答。

「れんけい……? ああ、なるほど、さっき天啓で聞いた、か」

「联系……?啊,原来如此,刚才有听到天启吗?」


 女性はふむと唸って何か思案し始める。

女性不经意地开始喃尼好像着想些什么。

「では、俺からも質問だ。お前には前世の記憶があるのか?」

「那么,我開始質问。你有前世的记忆吗?」

 今度は男性が、わずかに興奮を帯びた声でシオンに尋ねてきた。

这次,男性用略带兴奋的声音询问了西昂。

「えんせ? ない、それ?」

「恩?那个,没有?」
「……前世とは生まれ変わる前の自分のことだ。お前には別人の記憶があるのか、と訊いている」

「……前世是指重生之前的自己。我问你是否有别人的记忆。」

「わからない」

「我不明白」

 シオンはふるふると首を横に振る。

西昂摇摇头。


「なら、お前はシオン・ターコイズなのか?」

「那么,你是西昂・達可易斯吗?」

「あい」

「恩」

「………………」


 シオンはこくりと首を縦に振った。

西昂低下头。

 男性はそれで質問を止めていったん沈黙する。

男性因此停止提问,暂时保持沉默。

「なるほど、ね。やはり前世の記憶が覚醒しているわけじゃあないみたいだ。これだとこの坊やが熾天使の因子を持つ者なのかはわからない」

「原来如此。果然前世的记忆并没有觉醒。这样的话,不知道这个小子是否是拥有炽天使因子的人。」

 女性が溜息交じりに言った。

女性叹着气说道。


「……しかし、一つの肉体に二つの魂を宿していることは確かだ。つまり、こいつは世界の理を無視した存在だということ。熾天使の因子があろうがなかろうが、『転生法』の貴重なサンプルにはなる」

「……但是,确实在一个肉体中寄宿着两个灵魂。也就是说,这家伙就是无视世界道理的存在。无论是否有炽天使的因子,都会成为‘转生法’的贵重样品。」

 男性が感情を押し込めたような声で、淡々と告げる。

男性用压抑着感情的声音,淡淡地告诉說著。

「それにしたって我々が追い求める転生とは異なる形での転生なんだけどねえ。シオン・ターコイズの魂はいらない。とはいえ、坊やの転生を引き起こしたのが誰かの意図によるものなのか、天然物なのかは知る必要があるね。熾天使の因子のことも……」

「即使那样与我们所追求的转生是不同的形式的转生,不过。西昂・達可易斯的灵魂不需要。话虽如此,还是有必要知道引起小子转生的是谁的意图呢,还是自然發生呢。熾天使的因子……」

 女性はシオンを観察し、値踏みするように語った。そして――、

女性观察西昂,说的好像要估价似的。然后——

「ま、獲得した魔眼スキルも少し面白そうだ。ついでに調べるとしようか。この坊やの身柄はこのままダアトの研究所に預けるとしよう」

「嘛,获得的魔眼技能也稍微有趣。顺便查一下吧。这个小子的身體就这样交给達阿特的研究所吧」

 と、すぐ傍に立つ男性に言う。

马上对站在旁边的男性说。

「わかった。」

「知道了。」

 男性が返事をする。
男性回答。

 そこで、シオンの意識は再び途切れた。

于是,西昂的意识再次中断了。





北山結莉 新作(本web作品)『 進擊的沒落英雄』書籍化決定
原文:
『進撃の没落英雄』の“書籍化”が決定しましたので、この場を借りてご報告申し上げます。詳細は近日中に公開できると思います。よろしければこの機会に作品をご覧くださいませ。


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全部評論 27

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YOLIDO 子爵
谢谢楼主分享

4 年前 0 回復

基佬王咸鱼 平民
感觉好像不错

4 年前 0 回復

南姬 勳爵
' _--_ 发表于 2020-2-18 14:41 建议私信,或者QQ '


有道理,我几乎不看轻国不太明白

4 年前 0 回復

_--_ 侯爵
' 南姬 发表于 2020-2-18 13:18 请问大佬这坑还会不会往下继续呢?我在真白萌开坑一段时间后才知道在轻国有坑,如果您要继续翻译的话我就退 ... '


建议私信,或者QQ

4 年前 0 回復

南姬 勳爵
请问大佬这坑还会不会往下继续呢?我在真白萌开坑一段时间后才知道在轻国有坑,如果您要继续翻译的话我就退坑了

4 年前 0 回復

domfa 伯爵
跟進擊的巨人有87%像

4 年前 0 回復

k57876253 皇帝
翻译更新比较慢啊,剧情有点虐?

4 年前 0 回復

powershing 子爵
外掛大放送

4 年前 0 回復

cao1349367813 侯爵
感谢大佬翻译

4 年前 0 回復

k57876253 皇帝
男女主角的身份都是假货吗,对他们的未来有点兴趣了

4 年前 0 回復

machennan 伯爵
水山又开始不务正业了...精幻的web都鸽了多久了

4 年前 0 回復

bbnny 公爵
看到神眼兩字就聯想起神眼勇者

5 年前 0 回復

ssforce 子爵
北山也习惯性开局制造惨案,之后洗白。

5 年前 0 回復

aa1144772233 騎士
北山有空习惯性制造失踪人口……就不能先把幻想给填完吗

5 年前 0 回復

Heaven's 侯爵
感觉要全程开虐啊。。。北山牌胃药。。。

5 年前 0 回復

RECODE1 勳爵
希望不要再是幻想记那种感觉了

5 年前 0 回復

☆//魅星殛月 子爵
貌似是新作?

5 年前 0 回復

z013033 子爵
又是幻想記的套路嗎..........

我覺得看了會胃疼

不過就是個戀愛

5 年前 0 回復

AngryBird 皇帝
' 動漫Kirito 发表于 2019-9-25 10:19 “我”,已移除。北山精幻短篇還有沒寫出來的呢 說水山放棄可能還太早 ... '


但愿别有生之年,还期待美春跑回来见利欧呢

5 年前 0 回復

AngryBird 皇帝
本帖最后由 AngryBird 于 2019-9-24 23:13 编辑


それでも唯一、わかったことがある。
尽管如此,我唯一明白的事。

“我”要不要去掉比较好,那一段都是第三人称,突然来个第一人称好微妙的感觉

以及,日常青梅竹马失踪的北山,精幻web是彻底放弃了吗

5 年前 0 回復

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動漫Kirito 伯爵
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